市議選も泉旋風全開、現職当選は半数強の17、勢力関係も激変か

論評《市長選の構図と背景》2023明石市長選挙 松本 誠 2023.4.6

▶ 2023年4月:市民マニフェスト選挙(第4次:詳細)

1)4年前を上回る劇的な展開
2)泉市長と市議会の“対立抗争”その内実
3)県議選明石・泉派新人ぶっちぎり当選が意味するもの
4)明石市政の先駆、開拓性と首長の姿勢への評価
5)似通う政策、戸惑う市民、本当の争点は何か?
6)泉市政後継の丸谷氏圧勝、市民自治の明石市政は第2ステージへ
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8)「泉市政」とは何だったのか? 首長・泉房穂論へのアプローチ
※ 2023.7.30実施 市民自治あかし総会 活動総括資料より市長選関連部分を分冊 PDF
※ 泉市政3年半の検証 ;2022.8 PDF ──「第1ステージ」に相当

 市長選と同時に行われた市議選も、泉市長が擁立した「明石市民の会」の5人全員が当選しただけでなく、3人は驚異的な得票でトップ3に並び、4位までを独占。5人の得票総数は3万7730票、43人が競った投票総数の3割強を得票し平均7500票余という驚異的な票を得た。とくに最多得票の1万2658は明石市議会の過去最多得票5458票(2011年)の2倍以上に達し、2位3位も9800,8600票台を得た。いずれも40代の女性2人と男性で知名度もなく、出馬を決めてから実質3カ月余の活動期間しかなかった。トリプル選挙に吹き荒れた泉旋風が全開した得票と言える。

女性議員は過去最多の10人に増えたが、最大勢力の自民系は今回もゼロ

 また、定数30に対して現職の再出馬は21人と少なかったが、うち4人が落選したため現職の当選は17人、全体の56%にとどまった。一方、女性議員は前回を1人上回る過去最多の10人に増えた。公明党が6人のうち4人が女性になった一方で、最大会派の自民は今回も女性はゼロ、新人候補5人を立てて4人が当選した維新も女性はゼロだった。
 党派別では自民党公認候補は過去最多の7人が全員当選したものの、改選前の自民党真誠会所属議員は10人から7人に減った。公明党は今回も6人全員を当選させたが、自公議員は計13人と過半数を割った。共産党は20年前には5人の勢力を擁していたが漸減し、今回は候補者を2人に絞ったが56年ぶりに1人の当選にとどまった。

5月半ばまでに会派構成と役員体制づくりへ、議会内での連携工作が始まる

 こうした新議会の議員構成に変わったが、5月中旬までには会派構成が決まり正副議長や監査委員の3役や常任委員会の正副委員長などの議会構成を決める。どのような会派構成になるかと同時に、議会運営のリーダーシップを握る会派や有力議員がどうなるかが注目される。これまでは自民党系の真誠会が保守系無所属議員を勧誘し、公明党と合わせて過半数の勢力維持に奔走していたが、今回は対象となる無所属新人議員が少なく、市長が交代したこともあって各会派がどのような合従連衡を模索するかがこれから半月ほどの間の焦点になる。
 選挙後の記者会見で今月末に退任する泉市長は「あとは新市長と議員たちでやっていけばよい。選挙のために立ち上げた明石市民の会は今月末を以って解散する予定だ」と表明している。同市長が擁立した5人はまとまって会派を構成し、歩調を合わせることができる会派と連携するものとみられるが、豊富な経験が求められるまとめ役をどの議員が担い、どのような連携軸をつくるかが当面の焦点になりそうだ。

議会基本条例を遵守した議会運営へ、多くの“悪弊”改革をめざそう

 2010年の自治基本条例施行に続き、2014年には明石市議会が議会基本条例を制定施行している。
 同条例では、議会活性化と市民のために開かれた議会の実現を目的に掲げ、市民に対する説明責任を果たすことや政策立案と政策提言を積極的に行い、多様な市民意見を市政に反映させる議会運営に努めることも明記している。また、議会が「言論の府」であることや「合議体」であることを認識し、議員相互の自由な討議を重視して合意形成に努める原則も掲げている。
 しかし、施行初年度から、議会報告会を「誰でも参加し、市民と議員が自由に意見交換できる」報告会ではなく、特定の団体と常任委員会だけの意見交換会を行ったことを議会報告会と標榜し、議員間の自由な討議や市民との意見交換を多様に展開する具体的方策を検討することもないままに来ている。条例に掲げる「崇高な理念と目標」と現実との大きな落差が続いている。
 また「議会運営委員会申し合わせ事項」という形で、会派や議員を実質的に拘束する多くの取り決めが、改選を経ても引き継がれている。こうした“悪弊”を新人議員が多くなった新市議会で、どう改善・改革していくかも大きな課題である。

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