意見陳述

議会本来の役割を果たすために「議員間討議」の速やかな実施を求める請願

2018.12.17陳述 松本誠(市民自治あかし)

 自治体の議会改革が大きくクローズアップされ始めたのは2000年、21世紀に入ってからです。2000年4月に地方分権システムに移行し、自治体とりわけ住民に最も身近な市町村の役割が大きくなり、住民自治が大きな課題になってきたからです。

 この20年近く、自治基本条例が制定され、議会基本条例が急ピッチで制定されてきました。この動きは、「議会は何をしているのか?」という住民からの疑問の声に応えるべく、議会自らが「議会の存在感」を高めることの重要性を意識して、全国の自治体議会で議会改革の大きなうねりとなってきたものと思われます。

 全国の議会改革のうねりは、まず、議会活動が市民に分かるように「透明性を高める」ことが第一の課題として取り組まれ、会議の公開やCATV等による中継や録画の公開、さらにはインターネットによる録画の公開などのほか、議会報告会の開催、委員会等での請願・陳情審査の際の市民の発言や質疑などによる議会審議への住民参加などが行われてきました。

 議会改革に関わる専門家等によると、これらは議会改革の「第1ステージ」とされ、自治基本条例や議会基本条例の制定が始まってから概ね10年程度で一巡したと言われています。明石市議会が議会基本条例を制定された2014年ごろには、全国的な議会改革は「第2ステージ」に入ったと言われています。

 第2ステージの特徴は、議会が持つ本来的な機能である「行政のチェック機能」と「政策提言機能」を十二分に発揮する「議会の質的な改革」とされています。行政のチェックにしても、政策提言機能にしても、議会がその役割を果たすには議員個人々々が質疑や要望を通じて意見を述べても、政策に反映することは困難です。行政側としては、多様な意見を持つ議員個々の意見には耳を傾けるとしても、その指摘を市民のニーズとして受けとめて間違いなく行政施策に反映するには、議員個々の意見を議論を通じて合意形成し「議会の総意」としてまとめることが不可欠になります。

 そのためには、明石市議会の議会基本条例に謳われているように、「市民の意見を的確に把握し、政策立案および政策提言を積極的に行う」(第2条)「議員相互の自由な討議を重んじ、合意形成に努める」(同3条)「委員相互の自由な討議を行い、十分な議論を尽くす」(同12条)ことが大切だと、私たちも考えます。

「議員相互の自由な討議による合意形成」は、12条に掲げる「委員相互の自由な討議を行い、十分な議論を尽くす」ことによって導かれます。いわゆる「議員間討議」という、一人ひとりが選挙によって選ばれた議員同士の自由で闊達な議論が行われてこそ、「議論の場」である議会の面目が発揮され、市民にとっても「生き生きとした議会審議」を目の当たりにして議会への期待と信頼を高めることになるかと思われます。

 議会と議員は理事者側に質問するだけではなく、市民の意見を多様に吸収し意見交換を重ねるとともに、議員同士が政策を議論して議会としての意見をまとめて執行部に対抗しないと、行政監視や政策立案という議会本来の機能は発揮できないと言われています。議員同士が丁々発止と議論をたたかわせることなくして、二元代表制の一方の極としての議会の役割は果たせないと私たちも考えます。

 明石市議会が議会基本条例を可決成立してから、この10月でまる5年、来春の改選時期には施行後まる5年を迎えます。地方分権システムに移行後5回目の統一地方選挙を迎えるにあたって、自治体議会の改革の中身と議会の役割がますます問われています。

 私たちは2015年に新しい市議会の体制がスタートして以来、議会改革のより一層の進展を期待し、定例会の開催のたびに議会基本条例を遵守し、明石市議会がより一層議会本来の役割を果たしていただくよう、議会改革に関する請願を提出させていただきました。議会基本条例に謳われているように、議会が「多様な民意を反映する合議制の意思決定機関」として、市民の意見を的確に把握し、政策立案および政策提言を積極的に行うなど、多様な市民意見を市政に反映させる議会運営に期待を寄せてきたからです。

 残念ながら、11回にわたって提出してきた議会改革に関する請願は多数会派・議員の皆様の反対によってすべて不採択とされてきましたが、今期議会を終えるまでにいま一度、議会基本条例の根幹に関わる「議員相互の自由な討議による合意形成」いわゆる「議員間討議」の早期実施についてあらためて請願させていただきます。

 「議員間討議」については、議会活性化推進委員会等でも議論されていることは承知していますが、「自由討議は委員長が必要と認めるときに行う」「他の委員の意見を非難し、または否定するような発言は行わない」「委員に対する資料請求は行わない」などの多数意見により、未だ実施される見通しになっていません。

 また、議会審議を拝見していると、必要以上に会派単位の意見が重視され、議員一人ひとりの発言を制約する動きが感じられます。選挙で主権者市民から負託された議員個人の発言に制約をかけることは、市民の負託のもとに議論する議会のあり方として疑義を感じます。

 議会本来のあり方、議会基本条例に定めた議会運営のあり方に添うよう、議員間討議を速やかに実施していただきますよう、お願いします。

以上

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