市民マニフェスト 第4次 テキスト版

2023年3月成案

第4次 市民マニフェスト

 明石では自治基本条例が施行された翌年2011年の市長選挙から、政策提言市民団体「市民自治あかし」が市民マニフェスト選挙を提案し、以来3回にわたって「市民がつくる市民の政策」として市民マニフェストをつくり、選挙を前に公開討論会を開催して候補者に提案してきました。
 2023年4月の明石市トリプル選挙は、3期12年務めて昨年秋に「退任表明」した泉房穂市長が「後継市長が政策遂行をし易くする」として多数の市議選候補者を擁立し“新たな議会多数派”をめざす動きを続けています。新たな市長選挙の行方とともに、どちらかと言えばこれまで市長選の陰になっていた市議選が大きくクローズアップされる状況になっています。
 「市長も変わる、議会も変わる」という明石市政は、どうあるべきか? 「市民自治の市政とまちづくり」の推進を掲げた自治基本条例を施行して14年目に際して、市民自治あかしは4回目の市民マニフェストをつくり「市民がつくる市民の政策」を市議、市長選の候補者に提案します。
 今回の市民マニフェストは、新しい明石市政への動きに対応し、市政運営の基本姿勢を中心に重点的な政策課題に絞りました。2月12日から23日まで3回にわたって3地区で市民集会を開催し、提案された意見等を加味して「最終案」をまとめました。

(市民マニフェスト前文)
人口縮小社会における明石のまちづくりへの道筋

 3年におよぶ新型コロナ感染症の歴史的なパンデミックの出口が、ようやく見えかけてきました。しかし、21世紀の世界を見渡すと、私たちはさまざまな地球的課題に直面しています。気候危機、食料危機、エネルギー危機に加えて戦争の危機にも向かい合わねばなりません。
 足元を見れば、日本の人口減少が始まって15年になり、今年は毎年島根県の人口(67万人)が一つ消えるほど人口減少のピッチが上がっています。2050年には総人口が1億人を下回る予測が現実味を帯びてきました。この国はすでに「人口縮小社会」へ加速しています。しかし、国も自治体も市民も危機感が乏しく、これから半世紀以上続きかねない縮小社会に向き合う姿勢が見られません。
 もはや、自治体同士で“人口の奪い合い”をしている時ではありません。足元の人口減少に抗うのではなく、人口が減っても皆が幸せに生きていける持続可能な社会の仕組みに変えることが求められています。そのための政策が自治体には必要です。明石市は「SDGs未来都市」を掲げています。市長も、議会も、職員も、そして市民も、それを具体化していく不断の努力が求められています。
 明石市が「市民自治のまちづくり」を掲げた自治基本条例を施行してから13年になります。条例では、自治の主体である市民が積極的に役割を分担し、地域の課題や市政に関わっていくために「市政への市民参画」「協働のまちづくり」その前提になる「情報の共有」を市政運営の原則と定めています。残念ながら、こうした市政とまちづくりの目標と原則を市長や議員、職員も市民も十分認識されているとは言い難い現実にあるように感じます。
 地方自治の核心でもある「自分たちのことは自分たちで決める」という自立の精神を具体化した自治基本条例の定めを市民が自覚し、職員を含む市長と議員が一緒になって、いまこそ取り組むべき政策を共有する時だと考えます。
 4回目になる「市民マニフェスト」はそのような思いを込め、3回にわたる市民討論集会を経て作成しました。

  1. 市政運営の基本姿勢について
    • 自治基本条例を遵守する (総論)
    • 市民参画手続きをより明確にするために、市民参画推進条例の改正を図る (市民参画)
    • 情報公開条例の抜本的な改正 (情報の共有)
    • 自治基本条例の普及と浸透を図る (普及と浸透)
  2. 市長と議会、職員との関係改善、改革について
    • 車の「両輪」から「三輪車」へ、自治の主体を明確にする
    • 市長と議会は市民に開かれた場である議会で“熟議”を見える化する
    • チーム明石の総力を発揮できる市長と職員の関係を構築する
  3. 中長期的な財政見通しと計画の透明化について
    • 中長期の財政計画を明確にし、公共施設の再配置計画を市民と共有する
    • 後顧に憂いを残さない新庁舎建て替え計画を慎重に進める
  4. 循環型社会をめざした政策について
    • 世代を超えて、互いに支えあって暮らせるまちづくりをめざす
    • 子育て施策による人口の急増と偏在による市民生活への“歪み”を是正する
    • 里地・里山・里海の保全を図り、自然と人が共生する明石を実現する
    • 循環型社会の実現に対応したごみ減量目標に改め、新ごみ処理施設計画の規模圧縮を図る

1. 市政運営の基本姿勢について

(1) 自治基本条例を遵守する (総論)

 自治基本条例は、明石市の市政運営についての原則を定めた「自治体の憲法」です。市民自治の市政とまちづくりをめざし「市民の市政への参画」「情報の共有」「協働のまちづくり」を進めるために、あらゆる施策や計画づくりにあたって市民参画手続きの履行と説明責任を果たす。

(2) 市民参画手続きをより明確にするために、市民参画推進条例の改正を図る (市民参画)

 パブコメなど市民参画手続きの形式的な運用を避けるために、市民参画条例の不備を補う条例改正等を行う。形式的なパブコメ至上主義をやめる。重要案件での審議会等の設置の徹底や、市民説明会を条例に基づく「意見交換会」として運用する。

(3) 情報公開条例の抜本的な改正 (情報の共有)

 自治基本条例では、市政運営の原則で「情報共有」と明記され「情報公開」から大きな転換が図られた。しかし、その後も情報に関する条例は「情報公開」を定めた制度のまま放置されている。これは、情報の「公開」から「共有」へと転換した意味が市政の中で未だ理解されていないことを表しており、「市役所が保有している情報は原則、市民のものである」という「情報共有」への切り替えが行われていないことになる。

  • ① 速やかに審議会を立ち上げて、情報公開条例の大改正を行う。
  • ② 情報公開請求に対する開示決定への異議申し立ての方法が、情報公開審査会の所管から行政不服審査法の手続きへ移管されてしまっている。2016年の同法改正時に情報公開の重要性への認識を欠き安易に条例改正を行い、情報公開へのハードルを高くしてしまった。速やかに元に戻す。

(4) 自治基本条例の普及と浸透を図る (普及と浸透)

 自治基本条例の趣旨と適用が十分実行されていないのは、市政運営に携わる市職員や議員、市民への理解が浸透していないことも大きい。自治基本条例と関連する条例の遵守へ向けた職員研修の改善と実施、市民への啓発、市のHPの改善を図る。市民への啓発によって、市政の担い手としての市民意識を高める。

2. 市長と議会、職員との関係改善、改革について

(1) 車の「両輪」から「三輪車」へ、自治の主体を明確にする

三輪車↑クリックで図が拡大

 「二元代表制に基づく“車の両輪”」論から、主権者市民(自治の主体は市民)を念頭におい
た「市民と議会と市長の“三輪車”」を実体化する。市議会にも市民参画条例を適用し参画手順
の履行を義務付けるなど、市民参画の市政運営の強化を図る。(右図参照)

(2) 市長と議会は市民に開かれた場である議会で

 “熟議”を見える化する市長および理事者と議員は市民に見えない“根回し行政”を改め、市民に開かれた場である議会で堂々と“熟議”による議論を展開して施策を決定する。市長は常任委員会等に出席することを常態化し、市長と議会の議論の「見える化」を図る。

(3) チーム明石の総力を発揮できる市長と職員の関係を構築する

 選挙で選ばれた市長と職員の関係は、法律上は「市長の補助機関」であっても、両者は信頼関係に基づき市民から負託された責務を果たすチームとして、職員一人ひとりのモチベーションを最大限高める関係を構築しなければならない。間違っても強権的な姿勢により、職員が“面従腹背”の態度を取るような関係を生んではならない。

3. 中長期的な財政見通しと計画の透明化について

(1) 中長期の財政計画を明確にし、公共施設の再配置計画を市民と共有する

 市長は中長期の財政見通しを明らかにするために「5年および10年の中長期財政計画」を公表する。公共施設の更新や再配置等についても、現時点で評価した新たな公共施設再配置計画を策定し市民に公表する。

(2) 後顧に憂いを残さない新庁舎建て替え計画を慎重に進める

 巨費を投じて建設する新庁舎建て替え計画は、市民参画の欠如や未だに見直すべき課題が多いため、着工を1年でも2年でも先送りし、基本設計や実施設計を見直す時間的余裕をつくる。現計画のまま進めると、すべて見切り発車になり将来に禍根を残す。

4. 循環型社会をめざした政策について

(1) 世代を超えて、互いに支えあって暮らせるまちづくりをめざす

 地域の自立と自給できる社会をめざし、産業基盤の転換と老・壮・青年が明石で働き暮らせる多様な場をつくる。明石の立地条件を活かし、自立した暮らしの基礎になる食料・エネルギー・介護ケアを地域で自給する「FEC自給圏」構想を実践する。

(2) 子育て施策による人口の急増と偏在による市民生活への“歪み”を是正する

 10年余におよぶ子育て施策の展開等による人口の急増と偏在から、暮らしと住環境にさまざまな歪みが生じている。規制逃れのミニ開発等による住宅地の乱開発は防災上の危険招き、住環境の悪化をもたらしている。超過密からプレハブ校舎でしのぐ学校、過剰な保育施設などへの対応など、適切な是正策を講じる。

(3) 里地・里山・里海の保全を図り、自然と人が共生する明石を実現する

 生物多様性あかし戦略に基づく「自然と人が共生する明石」を実現する。そのために市街化調整区域を堅持し、市街化区域内の農地の保全を図ることや、ため池の多面的機能を活かしてこれ以上の埋め立ての禁止、貴重な里山区域である大久保北部の丘陵地一帯の保全活用をすすめ「里地・里山・里海保全条例」(仮称)を制定する。

(4) 循環型社会の実現に対応したごみ減量目標に改め、新ごみ処理施設計画の規模圧縮を図る

 明石市の一般廃棄物処理基本計画(2022-2031)でもごみ減量目標の設定が低く、その目標値がそのまま新ごみ処理施設整備基本計画(素案)に反映されて418億円という巨額の施設整備費(ほかに20年間の運営費256億円)に膨らんでいる。SDGs推進計画の数値設定も含めゴミ減量目標を飛躍的に高めるよう「廃棄物処理計画」を全面的に見直して、適正なごみ処理量に見合った施設計画に圧縮する。

以上 2023年3月

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