少数会派を排除する「代表者会」

明石市議会の「民主的運営」を阻む壁
―― 少数会派を排除する「代表者会」という存在

2023.5.27 松本 誠

 明石市議会は今年4月の市議会議員選挙で、改選前から大きく顔ぶれが変わった。
 定数30に対して43人が立候補し(現職21人、新人21人、元職1人)、選挙の結果、現職は17人と半数強にとどまり、新人・元職が13人と大きく顔ぶれが変わった。うち、女性議員は過去最多の10人になり、3分の1を占めた。
 改選前の会派構成は、自民党真誠会10と公明党6で過半数を占め議会運営でも両会派で思いのままに進めてきたが、改選後は無所属1人を加えて自民党8、公明党6と過半数を割る勢力になった。しかし、5月15日に行った正副議長などの役員選出では、両会派と維新の会4、かがやきネット4ら23人が協調し、事実上の“主流派”を形成して議長に公明の尾倉あき子氏(5期)副議長に自民党の灰野修平氏(2期)を選出した。これに対抗したのは、市民の会(5人)と一人会派の2名の7議員という構図になった。
 明石市議会は改選前、自・公で過半数を占めていたが、議案などをめぐっては10名前後の少数会派(3名未満)の議員と拮抗する議論がしばしば行われていた。2年前には5つの一人会派と2つの二人会派が生まれ議会運営委員会や代表者会、特別委員会からオミットされた議員が3分の1にのぼるなど、少数派の意見を“排除”するような歪な議会運営が行われていた。

議運委の「申し合わせ事項」で、改選後も縛る少数会派排除の議会運営

 議会運営を議論する場から少数会派の議員を排除するやり方は、市議会の代表者会や議会運営委員会の「申し合わせ事項」等により、これらの会議は会派議員3名以上の「交渉会派」で構成すると“取り決め”たことを、改選を経ても踏襲しているからだ。その結果、昨年は自民党と公明党、かがやきネットの3会派だけで議運委や代表者会を構成し、議会運営をリードしてきた。加えて昨年、一昨年まであった総合計画の特別委員会や新庁舎整備特別委員会も、3人以上の会派のメンバーだけで構成し少数会派の議員を締め出していた。
 特別委員会は、重要な案件については毎年メンバーを入れ替える常任委員会ではなく、継続的に、専門的に、より多くの議員の意見を反映するために少数会派の議員も含めた構成で設置される自治体議会が多く、極端な場合には全議員で構成するケースもある。明石市議会もかつては「3人以上の会派」に限定することなく、少数会派も含めた委員会構成にしていたが、新庁舎整備特別委員会は2018年に委員構成が変更され、事実上“会派代表者会議”のような構成になり、実質的な議論よりも会派の意見を持ち寄り調整する場に化していた。

「法令によらない会議」の代表者会が重要な役割を担う“怪”

 ところで、議会運営について協議する正規の機関は「議会運営委員会」となっており、会派の幹事長等の代表者で構成する「代表者会」は「法令によらない会議」とされている。明石市議会の会議の開催記録によると最も多く開催されているのが代表者会であり、概ね議会運営委員会の開催の直前に開かれることが多い。言い換えれば、代表者会で協議された結果を正式な会議である議会運営委員会で“追認”するような形がまかり通っていると言える。代表者会は法令に定められた正規の会議ではないから非公開で行われ、公開の会議である議会運営委員会では形式的な協議で終えることが少なくない。
 ※参考 市議会の会議実績

議会運営を話し合う場でも、少数会派を排除する“怪”

 改選されたばかりの明石市議会で、議会活性化推進委員会のメンバー構成をめぐって代表者会で議論があった末、一人会派の議員はメンバーに入れないことに決まったようだ。一人会派の排除に唯一反対した「市民の会」の中川夏望(なつみ)幹事長が、その経緯をSNS(Twitter)に投稿している。=(後段)別稿参照=
 議会活性化推進委員会は、議会基本条例を施行した同市議会が議会の活性化に関わる問題を扱う委員会で、毎年メンバーを選び直し議会運営に関わる課題を協議している。議会基本条例に定めている「議会報告会」の開催や委員会の会議公開のためのインターネット中継などの懸案をはじめ、最近では議会基本条例の見直しについても議論を重ねている。いわば、議会基本条例で明記した議会運営が条例通り推進されるかどうかをチェックし、推進する重要な委員会である。
 2年前には一人会派の議員が5人、二人会派が2つもあり定数30のうちの3分の1の議員が「議会活性化」を協議する会議に参加できない状態を是正しようと、少数会派から代表を1名出す決まりをつくった。今回は「一人会派は3つしかないから、一人会派からの選出は要らないのではないか」という発言が自民党からあり、今回は3人以上の会派が5つもあるから一人会派からの選出はしないことになったようだ。

会派優先で議員個々の自由な活動を規制する本末転倒の“怪”

 ここ20年ほどの明石市議会を見ていると、会派を異様に重視し、本来は一人ひとりの議員が選挙で選ばれている自治体議会のあり方を、会派の枠組みを利用して議員の活動を縛り、多数会派が連携して多数派の思うように議会を運営する傾向が強まっている。
 そもそも、政党政治を基本にした国政と異なり、自治体は二元代表制のもとに一人ひとりの議員が選挙で直接選ばれている。会派は当選した議員が議会運営上の便宜を優先して「同じ意見を持った議員が会派を形成し、効率的な議会運営を行う」手段としてつくられているに過ぎない。ところが、明石市議会では議会運営委員会の「申し合わせ事項」が引き継がれ、会派内で評決が割れることのないようにまとめることを強いるなど、議員個々の意見よりも会派の意見で議論を調整するという議会基本条例の趣旨に反した運営が行われている。
 議案によっては同じ会派内でも意見が割れたり、賛否が異なることは当然あり得るのだが、なぜかそれを許さない雰囲気を議会内につくっている。そうした“縛り”が一人会派を生み出す要因の一つになっており、3人以上の会派に入らなければ議会運営の協議の場から締め出されるという本末転倒な議会運営が続いている。
 また、会派間の調整を優先することから、議会基本条例に明記した「議員間討議」を避けることにもつながり、市民が傍聴しても議員間の丁々発止の議論が見られず、議会そのものが活性を欠いたものに映ってしまう。

自由な議員間討議で透明性のある議論と合意形成を図る議会へ

 中川議員の投稿や、それに共感する投稿者がいぶかる明石市議会の病巣は、こうした議会運営の実態にある。3人以上を有する限られた会派だけで議会運営を行う。正規の、公開された議会運営委員会ではなく、法令によらない会議に過ぎない「3人以上の会派」の代表者会で大事なことを決めていく“密室協議体質”。議員間討議を避けて、市民の前で白昼堂々と議論をして合意形成を図る体質の欠如。こうした病巣が、明石市議会の活性化を妨げ、市民が分かりやすい議論を行わない議会を生み出している。

=別稿参照= 今後に不安を覚える代表者会

中川なつみ・明石市議会議員(市民の会)のSNS投稿 2023.5.24

 辻本議員のブログに『今年度は、議会活性化推進委員会から一人会派の議員は排除されています』とあります。 これは代表者会で決定しました。 反対は私たち市民の会のみでした。 経緯をお話しします。
 議会活性化推進委員会の委員の選出にあたり、例年通り一人会派の中から1人選出するという話(会則に規定されています)に対し、自民党の三好前幹事長が「今年度は一人会派は3つしかないから、一人会派の選出はいらないんじゃないか」と発言されました。
 私は「議会を活性化するための委員会なのに減らす必要あるんですか?」と質問しました。 減らす理由は以下だそうです。
・昨年は一人会派が10くらいあって、1人選出できる会派は3つしかなかった。(計4名)
・今年は1人選出できる会派が5つもあるから一人会派除いても既に5名いる
・会派を組むということは大変なことだ。一人会派はそのデメリットを踏まえても一人を選んでいる。
・自民党ですら1人しか選出されないんだ と、だんだん会派の意義の話になっていったので、『これは議会活性化委員会だけの話ですよね?』と確認しました。
 この件は持ち帰り(会派に戻って話し合うこと)となりました。市民の会は全員一致で一人会派の排除に反対でした。 後日の代表者会。自民、公明、維新は全面的に排除に同意。かがやきは「今年度に限り」という言い方をされましたが、排除に同意。
 私はもう排除確定だと思ったので、「今年度はわかりました。ただ、議会活性化委員会の趣旨から考えても多くの人の意見を取り入れる方がいいと思うので、会則から『一人会派から選出される』という文言は消さないで下さい」と言うと、 「例外という考え方はないので会則から消すしかありません」と議会局の方に言われました。 会則から一人会派は選出される文言は削除になり、一人会派は排除となりました。 以上です。

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投稿 2023.6.2:「代表者会」の「代表」? 2023.6.2 ¶$$さん
投稿 2023.5.29:《少数会派を排除する「代表者会」》に思う。¶##さん

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