第25条~ | 明石市自治基本条例

「条文」と「解説」の対照表【当会独自 】

1)前文・目的・定義
2)最高規範・自治の基本原則(第3条~)
3)市民・市議会・市役所(第5条~)
4)参画・協働・情報の共有(第12条~)
5)市政運営(このページ)
6)条例の検証と見直し(第37条~終)

第4章 市政運営
(基本原則)第25条
【条文】
市長等は、次に掲げる事項を基本原則として、市政を運営するものとする。
【解説】市政運営の基本原則を定めています。
(1) 参画と協働に基づくこと。〈第1号〉第1は、「市民参画と協働」や「市長等や市議会の説明責任」を常に意識した市政運営が行われることです。
(2) 公正で透明であること。〈第2号〉第2は、市政運営に当たって、市政の公正さと透明性が確保され、市の行政の活動が市民に説明され、納得が得られる形で進められることです。
(3) 効果的で効率的であること。〈第3号〉第3は、市の行政の活動が、よりいっそう「効果的・効率的」に行われることです。
(4) 施策を計画的に実施し、実施結果について評価を行うこと。〈第4号〉第4は、計画に基づいて総合的・計画的に市政を運営するとともに、適切に評価を行うことです。言い換えると、市政運営に当たって、PDCA(Plan(計画)・Do(実施)・Check(評価)・Action(改善))のマネジメント・サイクルを機能させることが必要です。この4つの基本原則は、本条例第26条以下の規定の基本となる考え方を示すものです。
(総合計画等)第26条
市長は、市政を総合的かつ計画的に運営していくための基本となる計画(以下「総合計画」という。)を市民参画の下で定めなければならない。【解説】
〈第1項・第2項〉総合計画は、市民と共有する市の将来ビジョンを示し、市政を総合的かつ計画的に運営していくための中心となる、市の最上位の計画です。
そのため、自治基本条例において、その法的根拠と策定の義務付けを定め、その意義を明確にするものです。
また、市民参画の仕組みについては、本条例で別途定めるところですが、総合計画の重要性に鑑み、市民参画のもとで策定されるべきことをあえて規定しています。

市長は、市民と共にまちづくりを進めていくため、市民と共有できるまちづくりの目標を総合計画に定めるものとする。

市長は、総合計画に定めるまちづくりの目標を実現するため、具体的な施策・事業について個別の計画を定めるとともに、実行していくための計画を策定し、達成目標等をできる限り数値で示すものとする。
〈第3項〉第3項と第4項は、現在進められている第5次長期総合計画の基本的な考え方を反映したものです。
現行の第4次長期総合計画は、基本構想・基本計画・実施計画をもって、総合計画と位置付けていますが、次期、第5次長期総合計画では、これまでとは違った体系の総合計画を検討しており、行政各分野の具体の施策・事業については、総合計画とは別に個別計画や実行計画に基づき展開していく考えです。

市長は、総合計画及び前項に規定する計画(以下「総合計画等」という。)に基づくまちづくりを推進していくため、適切な進行管理を行い、検証及び評価をし、必要に応じ見直しを行うものとする。
〈第4項〉市政を総合的かつ計画的に運営し、まちづくりを推進していくために、総合計画だけでなく、個別計画や実行計画を含めて一体としてとらえ、PDCAのサイクルをうまく機能させて市政を運営していくことを定めています。

予算編成等の財政運営、評価、行政改革、組織編成等は、総合計画等と調整を図りながら行われなければならない。
〈第5項〉予算の編成や財政の運営、事業等の評価、行政改革、組織の編成、市の様々な政策や各種計画の策定などに当たって、総合計画等との関係を明確にして行われるべきことを定めています。
(財政)第27条
市長は、総合計画等に基づき、又は事業等の評価を踏まえ、計画的な財政運営を行い、予算を編成しなければならない。【解説】財政は、市政運営の根幹をなすものであり、財政運営に当たっての基本的な考え方を定めています。〈第1項〉財政運営や予算編成に当たって、(1)総合計画等に基づくこと(参照、第26条)、(2)事業等の評価等(参照、第29条)を踏まえることを定めています。

市長は、財源の確保及び効果的で効率的な経費支出に配慮することにより、健全で持続可能な財政運営に努めなければならない。
〈第2項〉市長は、(1)必要な財源の確保を図ること、(2)財源を効果的で効率的に活用することを通じて、健全で持続可能な財政運営に努めるべきことを定めています。

市長は、市全体の財政情報を市民に分かりやすく公表しなければならない。
〈第3項〉財政状況の公表は、地方自治法第243条の3の規定により義務付けられていますが、市民に市の財政や予算について関心をもってもらうためには、分かりやすい情報の提供が不可欠です。
そのため、①他都市の財政状況との比較内容を充実すること、②理解しやすい内容に工夫すること、③市全体の財政情報を提供することなどにより、より分かりやすい財政情報を公表すべきことを定めています。
(政策法務)第28条
市長等は、地域の実情にあった質の高い行政を行うために、職員の法務に関する能力を高めるなど、法務の体制を充実しなければならない。【解説】
〈第1項・第2項〉地方分権の進展により、自治体は地域の実情にあった特色ある政策づくりを推進することが求められています。
そのため、国などに頼らず、自治解釈権(自己の責任で適正かつ積極的、自主的に「法」を解釈・運用すること)や、自治立法権(自主立法として条例をつくること)を有効に活用して、地域の実情のあった政策づくりを推進すべきことを定めています。また、組織や職員が、現在の法的な仕組みを理解し、どこに問題があるのかを発見し、より良い法制度を組み立て、そして運用することのできる法務能力の涵養など、法務体制を充実すべきことについて定めています。

市長等は、積極的に政策づくりを推進するため、自治立法権等を有効に活用していかなければならない。
(評価)第29条
市長等は、実施する事業等について、市民参画の下、検証及び評価を行い、その結果を公表しなければならない。【解説】PDCAのサイクルで市政を運営していくために(参照、第25条第4号)、市の政策や施策・事業等について評価制度を構築すべきことを定めています。〈第1項〉市長等が、政策や計画、実施する事業等について評価を行わなければならないことを定めています。
市民参画と協働のまちづくりを進め、市政の透明性と市民の関心を高めていくために、(1)評価を市民参加のもとで実施すること、(2)評価結果を公表することを定めています。
現在、市では、事務事業について市民の目線で見た評価を行うため、学識経験者や公募市民など外部委員からなる行政評価委員会を設置し、必要性・有効性・効率性について事務事業評価を実施しています。
また、審議は公開で行い、評価結果は広報紙や市ホームページで公表しています。

市長等は、前項の評価の結果を、総合計画等、財政運営、予算編成、組織編成又は個別の事業等に反映させるよう努めなければならない。
〈第2項〉PDCAのサイクルで市政を運営していくため、評価の結果を総合計画等や財政運営、予算編成、組織編成又は個別の事業等に反映させるよう努めることを定めています。

評価に関し必要な事項については、別に条例で定める。
〈第3項〉具体的な評価制度の構築は、別に条例で定めることとしています。
(行政改革)第30条
市長等は、積極的に市民活力を活用しながら、持続可能な行財政体質を構築しなければならない。【解説】
〈第1項〉地域資源と限られた人材・財源を最大限に生かしていくためには、行政改革の取組みが極めて重要です。
参画と協働のもと市民意見や市民活力も積極的に活用しながら全庁あげて市役所の体質改善に努め、将来にわたって持続可能な行財政体質を構築するため、地方分権や少子高齢化、情報化など時代の変化に機敏に対応した取組みを進めていくことを定めています。

市長等は、質の高い、効果的で効率的な市民サービスを行うため、行政改革の推進に取り組まなければならない。
〈第2項〉行政改革は、組織や事務事業などを見直し、これにより生み出された財源や人材は市民が求める福祉や教育などの分野に重点的に投入することで、質の高い市民サービスを実現していこうとするものであり、その推進に取り組むことを定めています。
(組織)第31条
市長等は、市民に分かりやすく、簡素で機能的な組織を編成しなければならない。【解説】
〈第1項〉市長等の責務として、行政需要の変化に的確かつ迅速に対応し、政策課題を着実に解決できるよう、スクラップアンドビルドを基本に、簡素で機能的かつ市民に分かりやすい組織の編成に努めること、また、そのために常に組織の見直しを行うことを定めています。
市では、これまで社会経済情勢の変化に対応し、新たな行政課題や市民ニーズに応えていくため、柔軟で効果的な組織の編成に努めるとともに、総合的・横断的課題に対しては、プロジェクトチームなどの活用を図ってきています。

市長等は、市民サービスができるだけ市民に身近なところで処理されるよう組織の整備、充実を図るとともに、社会情勢又は市民ニーズの変化に的確に対応し、常に組織の見直しを図らなければならない。
〈第2項〉参画と協働のまちづくりを進めていくためには、より迅速な意思決定を行うとともに、その決定内容については、市民に対して十分に説明責任を果たしていく必要があります。
このため、意思形成過程の簡素化に努めるとともに、市民からみて責任と権限の所在が分かりやすく、市民に近い組織レベルで対応ができるように、市の組織・体制を整備すべきことを定めています。
(行政手続)第32条
市長等は、市政運営における公正の確保と透明性の向上を図り、もって市民の権利利益の保護に資するため、別に条例で定めるところにより、行政手続を適正に行わなければならない。【解説】自治体の活動は、結果さえ住民のためになっていればよいということではありません。その活動が法令に基づいて行われることは言うまでもなく、行政の公正性、透明性をより高めるため、その途中でどういう処理が行われたのか、どうしてそういう結果になったのか、その活動の過程を市民から見えるようにし、その活動をきちんと説明し、納得を得られるよう行政手続について別に条例で定めることとしています。
なお、行政処分等に関しては、明石市行政手続条例(平成9年3月31日公布、平成9年10月1日施行)が制定されています。
(要望、苦情等への対応)第33条
市長等は、市民の市政に対する要望、苦情等に対して誠実かつ迅速に対応し、その内容を施策又は事業の改善に反映するよう努めるとともに、当該要望、苦情等に対する検討結果及びその理由を公表しなければならない。【解説】市民からは、参画と協働を推進する仕組み以外でも、様々な形で要望や苦情、意見や疑問等が市に提出されます。
要望、苦情等への対応は、一方で、市の施策や事業をより良いものに改善するためのものですが、他方で、簡易迅速かつ適切に、市の施策や事業によって市民が被った不利益を救済するためのものでもあります。
市民との情報の共有や、市民との信頼関係の形成に資するものです。本条では、このような市民からの要望、苦情等に迅速に対応すること、真摯に検討を行い、施策や事業の改善につなげること、検討の結果及び理由を回答(公表)するよう定めています。
(行政オンブズマン)第34条
市長は、市政に関する市民の権利利益の侵害を救済する制度として、別に条例で定めるところにより、行政オンブズマンを設置する。【解説】市では、すでに要綱に基づいて、「自分の権利や利益の侵害にかかわることであれば、市長等が行っているサービスやそれに関連する職員の行為が、違法、不当、不公平、不適切などと感じたときは、行政オンブズマンに苦情を申し立てることができる。」という行政オンブズマン制度を設けていますが、本条例でその根拠と位置付けを明確にするものです。本条例と同時に「明石市法令遵守の推進等に関する条例」(平成22年3月29日公布、平成22年7月1日施行)が制定され、オンブズマンに関する規定も定められています。
(法令遵守及び公益通報)第35条
市長等又は職員は、法令を誠実に遵守しなければならない。【解説】
〈第1項〉「法令遵守」とは、「単に法令の条文の一字一句を守る」ということではなく、適法であることは言うまでもなく、法令の趣旨目的を理解し、妥当な行政運営を図ることです。
市長等や職員は、市政運営における公正の確保と透明性の向上を図り、公正な職務執行を推進するため、法令を誠実に遵守しなければならないことを定めています。

職員は、公正な職務の執行を妨げるような違法又は不当な事実があると思ったときは、通報するものとする。
〈第2項〉職員は、公正な職務の執行を妨げるような一定の犯罪行為やその他法令違反行為が生じ、又はまさに生じようとしていると思ったときは、通報窓口に通報することを定めています。
職員が公益通報をしやすい環境を整備し、市の業務における法令遵守を確保することを目的とするものです。
なお、通報を職員に義務付けることまではできないため、取扱いの原則や方針を宣言する表現である「ものとする」にとどめています。

前項に規定する公益通報等に関する処理その他必要な事項については、別に条例で定める。
〈第3項〉「公益通報等」とは、内部公益通報(第2項に定めていること)及び外部公益通報(市が処分権限等を有する行政機関として、企業の従業員等から公益通報を受け、適切に処理することにより、国民の生命や身体の保護、権利、利益を擁護すること)を指しており、それらに関する処理その他必要な事項については、別に条例で定めることとしています。本条例と同時に「明石市法令遵守の推進等に関する条例」(平成22年3月29日公布、平成22年7月1日施行)が制定され、法令遵守と内部公益通報及び外部公益通報に関する規定も定められています。
(危機管理)第36条
市長等は、市民の安全と安心を確保するため、適切なリスク管理(危険を予測し、その対策を講ずることをいう。)を行うほか、緊急事態に適切に対処できる体制の充実及び強化を図らなければならない。【解説】
〈第1項〉市民の安全安心を守るために、安全管理・危機管理体制の充実、強化を図るこ
とは市の責務であり、その責務を果たすために、市長等が緊急事態等の市民の安全安心を脅かす事態に適切に対処できる体制を整えておくべきことを定めています。
「安全と安心」には“万全”というものはありません。したがって、安全安心の確保をより確実なものとするために、適切なリスク管理を行うことを盛り込んでいます。
現在、市では、市の施設やイベントの安全性に関して、リスク(危険因子)の低減を目的として事前事後に検証し、必要に応じて助言等を行うリスク管理者を置いて取り組んでいます。

市長等は、市民、関係機関並びに国及び他の地方公共団体と相互に連携、協力しながら、市民の安全と安心の推進に取り組まなければならない。
〈第2項〉市長等は、市民、関係機関、国、他の地方公共団体と相互に、連携、協力しつつ、市民の安全と安心の推進に取り組むべきことを定めています。
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